西日本一周 その6

これを書いているのは6月なのですが、僕は昔からあんまり6月が好きじゃないのです。梅雨だし、祝日もないし

なにより僕は6月になると毎年何らかのよくないことが起こります。1年の時は原付で右折してきた営業車にひき逃げされ、2年の時は警察に捕まって2万円を奪われました。3年の時は軽トラと正面衝突。今年は何が起こるのかと思ったらなんと普通自動車の仮免許試験に落ちて追加で一万円を支払う羽目になりました。多分今後もそうなんでしょう。でもそれでいいのです。クソみたいな6月を過ごすことによってその後に控えている7月、8月、9月が死ぬほど楽しく思えるのならまあトータルで見れば許せなくもないのです。

僕が人間の得る快楽というモノを相対的なものだと考えるようになったのはこういう体験があったからなのかもしれません。

 

 

この6日目も西日本一周の旅の中で唯一ずーっと雨に降られた日でした。でもそれでいいのです。ずっと雨はさすがに嫌気もさしますが、かといってずっと晴天続きも感動が薄れますからね。

 

薄暗い駅のホームで目覚めた午前3時過ぎ、寝ぼけ眼をこすりながら荷物を片付けました。

佐賀の観光地を思い浮かべる時、すぐにぱっと思い浮かぶ人あんまりいないんじゃないかなと思います。そんな観光後進国の佐賀で見つけた唯一といっていいほどの見どころがこの大魚神社です。

 

 

有明海を見るのは初めてですが、この海はなかなか日本の海の中でも潮位差が大きいみたいで

 

 

ぽけーっと朝焼けの海を眺めているといつの間にか足元にまで波が打ち寄せてきていました。

 

 

日が昇ると鳥居が完全に浸かり、辺りには海鳥の鳴き声が響き渡ります。

以上今日の見どころでした。この後はもうずっと雨です、たまに雷が落ちました。

雨の日くらいネカフェでゆっくり少年ジャンプでも読んで過ごしたいものですが、生憎今日中に長崎に移動しないと九州を制覇できません。

 

 

 

これは長崎に行く途中で通った諫早湾干拓道路です。道路兼堤防です。奥にうっすらぼやけて見えるのが雲仙普賢岳ですね。

多分晴れてれば気分も爽快になれる道なのでしょうが、雨が降ったりやんだりの天気では何の感慨もありません。それどころか異様に虫が多いんですよこの道。渡り終える頃にはヘルメットのシールドが虫まみれになっていました。

 

 

雷が落ちてきたので雨宿りをしています。一生ファミリーマートから出たくないと本気で思っていました。

 

 

 

雨を何とかやり過ごして雲仙普賢岳に登ります。つくづく雨の日はする事が無いので暇なんですよね。

山頂へ行こうとしたらなんと濃霧で通行止めを食らいました。しょうがないので温泉に入って今日はもう寝よう。そう思いながらバイクを走らせると

 

 

なんかすげえとこに来ました。雲仙温泉です。今まで日本全国あらゆる温泉街を巡ってきましたが、道路が湯煙に包まれているのはここくらいのもんでしょう。

空き地に車を止めサッと自炊を済ませていざ地獄めぐりです。ここで言う『地獄』とは地表から火山ガスを含んだ水蒸気が至る所から噴出している地形を指し、有名な場所では草津温泉別府温泉などがあります。この地獄がある温泉はほぼ酸性湯でだいたい近くに火山があります。

 

 

霧雨の下で湯煙はより一層色濃く立ち昇ります。こんな空模様でもわりかし観光客がちらほらと辺りをぶらついていました。

 

 

この水蒸気は温泉の湯気とは違い硫黄やその他有毒物質が混ざっているので顔の粘膜を侵食していきます。ちょうど呼吸器官に違和感を覚えた辺りで雨も強くなってきたので退散。

 

 

国民宿舎に併設されている温泉へ雨宿りも兼ねて立ち寄ることに。

こういういかにも昭和の時代に取り残されたような温泉は今ではあまり見かけなくなってしまいました。

 

 

貸し切りイェイ

こじんまりとした浴槽は一人で入る分にはちょうど狭すぎず広すぎず、ゆっくり温まることが出来ました。

雨音を聴きながら入る露天風呂はなかなか風情があっていいもんです。

 

 

こういう昭和っぽいお土産ってどこで仕入れてくるんでしょうかね。三時間くらいぼけっとしていると閉館の曲が流れてきました。

外はしとしと雨模様

でもいつまでもここにいる訳にもいかないのでしぶしぶ合羽を着て下山しました。

帰り道が凄く怖かったんですね、目の前にカミナリとかめちゃくちゃ落ちてきたんですけど、でも雨宿りできる場所もないし止まったらなんか直撃しそうだったので涙目になりながら麓の道の駅までかっ飛ばしました。

 

道の駅のベンチでごろごろしていると背の高い欧米系の若い男性がトイレで何やらよく分からんビニール袋に水を入れていました。

暇だったので眺めているとその男性は水を入れたビニール袋を駐車場の軽ワゴンのドアに括り付け、針のようなものでいくつか袋に穴を空け始めました。その下で水浴びをする男の人、どうやら即席のシャワーだったようです。コロンブス的発想に感銘を受けた僕は男の人に話しかけましたが、案の定英語で返されてしどろもどろに。

するとどこからか買い物袋をぶら下げた若い日本人女性がやってきました。聞けばこの女の人はドイツと日本のハーフで、小さい頃からドイツで暮らしていたそうで。

 

男の人はボーイフレンドで、大学院の夏休みを使って軽ワゴンで日本一周をしているとの事。女の人に通訳をしてもらいながらの奇妙な国際交流は長らく一人の夜を過ごしてきた僕にとって久しぶりの賑やかな夜になりました。