大長編ツーリングin九州 一日目
大長編っていい響きだと思いませんか?
僕は結構この言葉が好きなんですよね。なんかこう胸を思い切りぶったたかれるようなワクワク感と未知の世界へのはちきれんばかりの期待が入り混じった気分になる言葉だと思ってます。
旅において3泊以上夜を越した場合は僕の中でその旅が大長編に分類されます。
大長編ともなれば普段の週末に一泊二日で四国をぶらつくのとはもう次元が違う体験と感動があるわけで、それを乗り越えていくたびに自分の価値観が変わっていくのがとても面白いんですね。
そういった意味で大長編の旅は僕にとって節目の旅ともいえるかもしれません。
現時点での大長編にあたる旅行は大学一年の夏に行った4泊5日の九州ツーリング、二年のゴールデンウィークに行ったこれまた同じく5泊6日の九州ツーリング、そして二年の夏に行った西日本一周ツーリングの3つです。これらの旅では自分の今までの常識を軽々と上回る出来事や景色に出会うことができました。自分が今まで暮らしてきた土地から離れて新世界へ赴くことにより、一般的な社会常識やモラルと引き換えに新しい自分自身の価値観や考え方を手に入れることができたと思っています。
今回の記事ではその記念すべき第一回目の九州ツーリングについて書こうと思います。
それでは大長編、はじまりはじまり~
さて、大長編の旅と言えどきっかけは普段の旅と同じく些細な出来事から始まります。
この時の旅のきっかけは、一言で言えば友達と花火を見に行ったことがきっかけです。
地獄のように続いたテスト期間と論文を打ち倒し、ようやく待ちに待った夏休みを迎えるだけというある意味一番楽しい時期に、仲の良かった友達と花火を見て気持ち良く夏を迎えようということになりまして、須崎市の海上花火なる物を見に行ったんですね。
海面スレスレに打ち上げられて水面に写り込む大輪の華はいやそれはもうダイナミックで夏の始まりをにわかに感じられる素晴らしい物でした。
で、この帰り道に友人の車で音楽を流しながら帰ったんですが、まあそのたくさんの曲の中で一曲だけBUMP OF CHICKENというバンドのギルドという曲がなぜだか妙に耳に残ったんですね。車を降りてみんなと別れた後も一人で帰り道ずーっとその曲を聴きながら物思いに耽っていました。
それから一週間くらいですかね、もうずーっとおんなじ曲を繰り返し繰り返し聴いてはなんだかもやもやしたような、晴れた空にぼんやりと薄曇りがかかったような気分で毎日を過ごしていました。どうにもこの曲の歌詞が他人事に思えなかったんですよね。
こういう歌詞なんですけどなーんか当時の自分にとって、自分を誤魔化してだまくらかして無理やり納得していたことを面と向かって指摘されたような、そんな気がしたんですね。
んで、そんなもやもやを抱えたまま夏休みを迎え、実家に帰りまして2~3日くらい何もせずにゴロゴロしてたんですね。なんか無気力になっちゃって。
で、あれは忘れもしません、8月14日の日曜日の夕方5時半頃ですね。
薄暗い部屋を貫くように窓から差し込んだ紅い西日の光とそれがスポットライトのように部屋の片隅を照らし出しているのを壁にもたれかかってぼんやり眺めていました。ギルドを聴きながら。
そうしたら急に頭の中に思い浮かんできたんですね。「そういえば俺九州いった事ねえなあ」と。
耳元ではボーカルの歌声も終わり最後のアウトロの部分、乾いた金属音が鳴り響いていました。
手元の財布を見ると折りたたまれた一万円札が一枚。
よし、行ってみるか、九州に。
いやほんとこんな感じで九州行きが決まりました。
自分でも面白いくらいに決まった瞬間に頭の中が九州一色になって、それまでのモヤモヤとか全部消え去ったんですね。単純なんですね。
その日の夕飯で母に明後日の早朝に急用ができたから高知に帰ると伝え、その日の夜と次の月曜日で大まかな行き先を調べました。するとどうも阿蘇という所がバイク乗りにとって聖地のような場所であることがわかりました。
じゃあ阿蘇に行くか。
行き先が決まったので出発です。
香川の実家を朝3時に出てまず高知に向かいました。大体8時ぐらいに到着して学食でご飯を食べてテントやら寝袋やらを回収してから11時くらいに高知を出ました。
四国から九州に行くにはいくつかルートがあるんですが、その中で一番安いルートが佐田岬から大分の佐賀関に向かう国道九四フェリールートです。確かこれで行くと自分と相棒を往復で渡っても5000円ほどで済みました。貧乏学生にはありがたいことこの上ないです。
さて、荷物を整えていざ九州へ
佐田岬までは結構時間がかかりました。大体4時間くらいですかね。
佐田岬が結構長かったんで後半結構眠たかったです。でも道自体はすごく走りやすくて快適でした。
佐田岬の終点の三崎港についたらもうすっかり日が暮れていました。僕が到着して大体30分ほど待っていると九州行きのフェリーが暁の彼方から姿を現しました。
今まで数えきれないほど旅をしてきましたが、それでも船の旅だけは特別感がありますね。何というか海を渡って新世界に向かうワクワク感がたまらなく旅情を醸し出すんですよ。チケットを千切って船に乗ったら一時間ほど波に揺られます。
船の中は普通のシート席と15畳ほどの座敷席がありました。座敷でリュックを枕にうつらうつら船を漕いでいると九州に到着です。
とりあえずここから目的地の阿蘇の手前、湯布院まで向かってそこで夜を越すことにしました。途中の道がめちゃくちゃ真っ暗でかなり怖かったはずなんですが、その時は全くそんなこと考えてませんでした。もうとにかく見たことない初めての場所を訪れた達成感と期待で頭がいっぱいだったんですね。そんなこんなで湯布院に到着しました。
湯布院駅はちょっと大きすぎて人目につきそうだったので反対側の閑静な場所にある南湯布院駅を宿にすることに。
最初は駅舎の中で寝ようとしたのですがまあこの時が、というかこの時期が蒸し暑いこと蒸し暑いこと、結局ホームのベンチにマットを敷いて寝っ転がりました。一応寝袋を持って行ったのですが、この日を含め全日で寝袋を使うことは無かったです。
そんなこんなで突発的に来てしまった九州、土地勘もなければ財布の中に残るはたった5000円。
しかしそんなことは一切不安要素になりませんでした。だって初めて訪れる場所で初めて見る景色がたまらなく楽しみだったんです。無謀と勇気は紙一重と言いますが、まあどっちも似たようなものなのでしょうね。
未だ見ぬ景色、しかしすぐそこで自分を待ち構えている景色。
はち切れんばかりの期待とこれから出会う冒険に思いを巡らせるうちにいつしか疲れた体は深い眠りに落ちていきました。
二日目へ続く~